ダンジョン・コンツェルト ― メイド服にご用心? ―〈Chapter 4〉

ダンジョン・コンツェルト ― メイド服にご用心? ―

 

〈Chapter 4:アフロvsドS☆ 運命の分かれ道〉

 時は移り、ダンジョンの一角、真新しい小屋の前にて。

 ネアの炎系最強魔法を至近距離からくらい、ボロボロになって横たわるサムソンとクリンの姿があった。
 うっかり「暇だ」と口走ったせいで、もともと呪いのメイド服を買ってきた元凶のふたりが、ネアの逆鱗に触れるのは当然のことだ。

 バーでの一件の後、ネアは正気を保てるようになっていた。

 サムソンが浄化魔法をかけた白いフリル付きのヘッドドレスをネアに装着したところ、なんとか萌えメイド人格からの支配を鈍らせることができたのだ。
 はずせば一瞬にして(*^ω^*)に逆戻りだが。

 ドラゴンと互角の力を得るためにも、ネアが1000人の“ご主人様”にご奉仕することは急務。

 敵を見張りつつ、ご奉仕する…。そのために考え付いたのは、
「ダンジョンの一角にメイド喫茶を開業する!」
 という荒業だった。

 ドラゴンが住むのはダンジョンの奥なので、動きがあればすぐわかる。

 …しかし。
 ダンジョンを通りすがる者はやはり少なく、最後の客は、2日前にやってきた冒険者ご一行様のみ(しかも、ネアが逆ギレし追い返した)。

 彼らのように報酬をもらって戦う『始末屋』でもない限り、こんなダンジョンに近づく物好きはいないようだ。

「サムソン」
 攻撃をくらったショックで門前に横たわったまま、つぶやくクリン。ネアはすでに屋内へ引き返している。

「読んだんでしょ。あの説明書の注意書き、最後まで」
「…読んだわよ」
 返すサムソン。髪が思いきり焼け焦げたため、虹色アフロのヅラを被っている(アフロ犬?)。

 マスターにもネア自身にも伝えることはできなかった、もうひとつの呪い解除法。

『この衣装を着用者へ贈った者と、呪いを打ち破るほど、激しく愛し合わなければなりません』

 それはあまりに衝撃的だった。

「ネアさんに手渡したのは僕だから、『贈った者』って僕のことだよね」
「あら、仕立て屋で最初にあの服に目をつけたのはあたしよ」
「………」

 沈黙の後、同時に上半身を起こすふたり。

「よく言うよ。自分のコスプレ衣装選びに夢中で、メイド服の防御力・魔法力なんかチェックしてなかったじゃん」
「んま! 見抜いてたわよ、そのくらい。あんたこそ、読むなら裏まで読んどきなさいよね、説明書」

「呪いは見抜けなかったくせに! インチキ僧侶!」
「その呪いも断ち斬れないヘボ剣士!」

「アフロ!!」
「ドS!!」

 最後は絶叫し、額をガチで突き合わせるふたり。
 事情を知らないネアが、屋内で何事かと挙動不審になっている。

 しばらくすると、サムソンが屈めていた身体を起こし、クリンの額を軽く指で突いた。
「いずれにしても、2つめの選択肢なんてないのよ。あたしたちがネアをどうにかするなんて、あり得ないでしょ」
「…まぁね」

 つまらなそうに、頬を膨らませるクリン。
 しかし次の瞬間、何かを思いついたように思いきり立ち上がる。

「ねっ! 提案があるんだ。サムソンにも、ネアさんにも聞いてほしいんだけど…いいかな?」
「あんた…たった今腹黒スイッチ入ったって顔してるわよ」
「え~? やだなぁ、気のせいだよ?」

 天使のように微笑むクリンの背後に、悪魔の漆黒の羽と触角・しっぽがちらりと見えた気がするサムソンだった。


「たしかに名案よ、それ」
 小屋の一室にて。紅茶を運んできたネアが、銀のトレイを胸の前に抱えながらつぶやく。

「あのときは、ドラゴンの動きを探るのが先決だったからここに直行したけど…。仕立て屋を問い詰めて、服や布の仕入れ元を聞ければ、手っ取り早く呪いを解く方法が見つかるかも」

「んん~…だけど、全員がここを離れるわけにはいかないわよぉ? ドラゴンがいつ暴れだすかわかんないし、もしものときは食い止めなきゃ」
 腕を組み、眉根を寄せるサムソン。巨漢の彼が座ると、椅子がまるで子供用に見える(ちなみにアフロ健在)。

「言い出したのは僕だから、僕が王都へ戻るよ。あの辺りには、マスターのバー以外にも馴染みの店があるし、動きやすいと思う。…ネアさんはどうします?」
「えっ?」
 突然話を振られ、きょとんとするネア。

「王都へ行けば、方法が見つかったとき即対応できます。ここでエモノを待つより、効率はいいんじゃないかな」

 さきほどの天使の笑顔で微笑むクリン。なにか下心があるのは明白だが、ネアは気づいていない。

「そんなことできないわよ! 敵の巣の前にサムソンひとりを残してくなんて」
 食って掛かるネアに、むっとした表情でサムソンが答える。

「んま、失礼ね! あたしひとりじゃ頼りないっていうのぉ?」
「そういうわけじゃないけど…」
「安心しなさい! あんなドラゴン、あたしが片手で捻り潰しといてやるわよぉ♪」

 両の指をボキボキと好戦的に鳴らしながら、ウィンクするマッチョアフロ僧侶――。

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