ダンジョン・コンツェルト ― メイド服にご用心? ―
〈Chapter 9:『始末屋』、依頼募集中!〉(最終話)
「マスター! テキーラもう1杯ね」
「ネアちゃん、もうその辺にしといたほうが…」
my塩とレモンを持参し、相変わらずの飲みっぷりのネアに、本気で売り上げよりも休肝日を勧めたいマスターである。
ドラゴンを倒し、王都へ引き返したネアたち一行は、国王より多額の報酬を受け取った。
『始末屋』の名も国中にとどろき、新たな仕事が舞い込む日も近いだろう。
「あーあっ、結局ネアさんとの仲は進展しなかったし…。つまんないの」
「ま、あの子に手を出して、命があっただけ有難いと思いなさいよ」
奥のテーブルでヴィンテージのシャンパンを傾けるクリンに、小指を立てて青汁○昧を飲みながらサムソンが返す。
「ネアが本気出したら、あたしらなんてとっくに宇宙の塵よ」
「あり得るから怖い…それ」
マスターから瓶を奪い取りラッパ飲みしているネアを横目に、身震いするふたり。
ドアベルが高らかに鳴った。
「ネアさん! クリンさん、サムソンさん」
聞き覚えのある声に振り返れば、愛らしい水色のセーラー風ドレスに身を包んだ凛が立っている。
「凛さん! どこへ行ってたんですか」
「そうよぉ、あんた。心配したのよ」
ドラゴンとの一戦の後、凛は忽然と姿を消していた。
敵を倒せたのは、凛の助言と力添えによるものだ。仲間として、喜びと報酬を分かち合いたい。
「すみません。屋敷に戻って荷物をまとめておりましたので…」
手には大きなボストンバッグ。主がいなくなったのだから、屋敷に残る理由はない。
「凛! 会いたかったわぁ~っ♪」
「まっ、ネアさん、昼間から大胆ですのね…」
すでに出来上がったネアに抱きしめられ、豊満な谷間の感触に悦に入っている凛も相変わらずだ。
「そうだ、聞きたいことがあったの」
ふと正気に戻るネア。
「このメイド服、呪いはもう解けてるのよね? それにしては、まだ変な感じがして脱げないんだけど」
「あ、その服だけは特別に、二重に呪いがかけられておりますの。ご奉仕からは解放されても、着脱制限はいまだ有効なのですわ」
「解除法って?」
「そ・れ・は…」
ポッと頬を染める凛。
「この服を縫製した人間…つまりわたくしと、1000回熱い口付けを交わすことです♪」
「な、なんだってぇ!!??」
椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がった、サムソンとクリンの声が重なる。
ネアはすっかり酔いが冷め、青白い顔で後ずさっている。
「または、縫製した者と、呪いを打ち破るほど激しく愛し合うことですわ! どちらがお好みですの? それとも両方…?」
「い、い、イヤぁぁぁ!!」
半泣きで叫んで逃げ出したネアを、身軽な凛がテーブルの上、椅子の上、カウンターの上と飛び移りながら追いかけていく。
背中に飛び道具も隠しているが、純粋に愉しんでいるようだ。
「ネアさん、わたくし、どこまでもついていきますわよ~っ♪」
「…凛さんって、意外とSだったりして」
「あんたに言われたくはないと思うわよ」
愛らしい女子たちのじゃれ合いを見つめながら。
店の修理代で今回の報酬吹っ飛ぶんじゃないか…と、ふと冷静になってしまうクリンとサムソンであった――。
◆『始末屋』、依頼募集中◆
魔法使いネア、剣士クリン、僧侶サムソンが
モンスター退治からトレジャーハント、人捜しまで
きれいさっぱり、何でも解決いたします
いつの日か、あなたの街にも!
― メイド服にご用心?・完 ―
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