カラフルメモリーズ #03 ~ 恋は爆裂パンクラッシュ! ~
【『まつかぜ』安中店 営業中のバックヤードにて】
| いっちゃん | 「おい、テラ!」 |
| マサキ | 「な…何だよイッチー、いきなりそんな仁王立ちで」 |
| いっちゃん | 「いきなりじゃねぇよ。オマエ、割り箸の発注忘れただろ。一昨日あんだけしつこく言って帰ったのに、完璧にスルーしやがって」 |
| マサキ | 「やべ、本気で忘れてた…(焦)。もう全然ねぇの?」 |
| いっちゃん | 「とりあえず今夜の分は足りると思うけど。つーか、こないだの菜々っちの『もやし騒動』といい、最近この店大丈夫なわけ? あたしここのバイト高1から4年目だけど、あんたらが入るまでこんなミスなかったからな。発注の権限あんの社員だけなんだし、ホールの話もしっかり聞いて対応しろよ」 |
| マサキ | 「返す言葉もねぇわ…。まじですいませんでした(最敬礼)」 |
| いっちゃん | 「(ニヤリ)…なぁ、もし割り箸足りなくなったらどーするよ? ホームセンターに買いに走るか? 恥ずかしいぞー、制服姿で大量に備品買い込みに来るとか、発注ミスでパシらされてるってバレバレだもんな。ランチタイムにもやしが足りなくなって2軒隣のスーパーで50袋買い占めてきたときの菜々っちの姿を思い出せよ」 |
| マサキ | 「うぉっ、勘弁してくれ(悶絶)! さすがにオレには耐えられな……」 |
| 菜々花 | 「………(ぷるぷる)」 |
| マサキ | (ハッ!!) |
| 菜々花 | 「もういーよ私が割り箸買ってくるから(泣)! どーせ私なんてパシリがお似合いなんだよっ! うわぁぁぁんっ!」 |
| マサキ | 「ゴメン菜々花オレが悪かった! 頼むから戻ってきてくれ、ギョーザ焦げるからー(泣)!!」 |
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| いっちゃん | 「いやーアイツらまじ面白いですわ」 |
| 夏美 | 「うふふっ。出来のいい先輩がいてくれて助かるわ」 |
| いっちゃん | 「まーあのふたりとは同い年とはいえ、あたしはバイトだし、あとどんだけここにいられるかわかんないですけど。大学も3年になれば就活始まるし、インターンとかも興味ありますしねー。いちお、出版社勤務が目標なんで」 |
| 夏美 | 「そうなの。将来の夢がはっきり見えてるっていいわね」 |
| いっちゃん | 「…だけど…」 |
| 夏美 | 「えっ?」 |
| いっちゃん | 「つーか前々から思ってたんですけど! なんでバイトに発注の権限ないんすかね? 厨房は社員、ホールはバイトやパートさんで備品管理したほうがずっと効率いいし、社員も仕込みに集中できると思うんですけど」 |
| 夏美 | 「うーん、考えてみればそのとおりよね。今まで誰も言い出さなかったから変わらなかったけど…」 |
| いっちゃん | 「あと、テーブルにアンケート置いて顧客のニーズ探るとか、特典付きのポイントカード作るとか、POPももっと、店舗ごとにバラバラじゃなく統一感持たせるとか。それにこないだホムペのぞいてみましたけど、あれもひどいもんでしたよ? どんだけ急ごしらえで作ったんだよ、って。本部にせめて一人くらい、そーゆーのに気を回せる社員いないんですかね?」 |
| 夏美 | 「そうねぇ…。バイトさんやパートさんにはあまり話したことなかったけど。『まつかぜ』は、この安中店が第1号店でね。私が高1でバイトに入った頃には、まだほんとに小さな『町の食堂』っていう感じのお店にすぎなかったの。それが、高崎に2号店を出すことになって、3号店、4号店って少しずつ規模を広げていって…。9年目の今、北関東を中心にフランチャイズを含めて50店舗以上を構えるようになったけれど、ほんとはまだまだ不安定な、穴開きだらけの駆け出し企業なのよ。いっちゃんの言う本部の組織作りもそうだし、現場は現場で労働組合を結成していくべきなんだろうし…」 |
| いっちゃん | 「…ふぅん…」 |
| 夏美 | 「あ、ごめんなさいね、こんな話(焦)! 私はずっと現場一筋でやってきたものだから、そういう、全店舗をくまなく見渡すっていうところにまではなかなか視野が及ばなくて…。……? いっちゃん?」 |
| いっちゃん | 「あ、いや…」 |
| 夏美 | 「ん?」 |
| いっちゃん | 「…なんか、やり甲斐ありそうっすね」 |
| 夏美 | 「えっ?」 |
| いっちゃん | 「別に。…ただ、この場所でアイツらと、こんなふうにずっとバカ言って笑い合ってんのも、案外悪くないのかもな、なんて…」 |
| 夏美 | 「ふふっ、そうね…。…もしよければ、レポートを書いてみてくれないかしら? 本部のエリアマネージャーの新井さん、もともと1号店…この安中店の初期メンバーなの。発注のこと、アンケートのこと、POPやwebサイトのこと、きっと目を輝かせて読んでくれるんじゃないかしら」 |
| いっちゃん | 「えー、そっすかねー? じゃ、暇だったら書いてみるかな。つーかあくまで暇だったらですよー?」 |
| 夏美 | (適材適所、か。…さっきのいっちゃんの目、あの頃の新井さんにそっくり) |
| いっちゃん | 「なんか言いました?」 |
| 夏美 | 「ううん。――いっちゃん。どうかこれからも、『まつかぜ』をよろしく頼むわね!(にっこり)」 |
〈END〉 |
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