カラフルメモリーズ #09

カラフルメモリーズ #09 ~ 恋は爆裂パンクラッシュ! ~

 

【ファミレスのテラス席にて】

『まつかぜ』エリアマネージャー 新井「あっ来た! 須藤くんこっちこっちー」
安中店店長(須藤)「待たせて悪かった、新井。店や本社では何かと顔を合わせているが、こうしてお前と、男同士サシで食事など、いつ以来だろうな」
新井「へへー。レイカさんも呼べば完全な同期会だったね♪」
店長「後白河が来るのは飲み会だけだ。騒がしいのは店長会議だけで勘弁してくれ。…で、最近どうだそっちは」
新井「うーん、ぼちぼちだよ? 先週の会議でも報告したけど、第1四半期の売り上げは、また僕らの西毛(西群馬)エリアがダントツだったし。やっぱり本社や1号店のある安中市周辺は強いよねv」
店長「いや、売り上げのことではなく、その…」
新井「…え、もしかして、新しく入った東毛(東群馬)地区のマネージャーさんのこと? あやー、意外と耳ざといんだからなー(苦笑)」
店長「月末からの『ビール祭り』の企画に関するプレゼンで、こっぴどくやられたそうじゃないか。いいのか、若い者に好き勝手言わせておいて」
新井「もうっ、ダメだよ須藤くんのそゆとこ! たとえ新人さんでも、斬新な意見はどんどん採用して、企画に取り入れてかなきゃ。この業界、どんな驕(おご)りに足をすくわれるかわからないんだからね!」
店長「まぁそうだが…。しかし、変わったな、お前は…」
新井「とーぜん(えっへん)。僕は社長の忠実なる右腕。『まつかぜ』を大きくするためだったら、どんな労苦も厭わないよv …そう決めたんだから。7年前の、あの日に…」

****** 須藤と新井の7年前の記憶 『まつかぜ』1号店(現安中店) 厨房 ******

初代店長(現『まつかぜ』社長)「来月高崎に出すことになった2号店だが。店長は、新井、おめぇに任せようと思う」
須藤・後白河「!!」
新井「えぇっ!? まさか……ぼ、僕がですかぁ(泣)!?
後白河「おやっさん、アタシも納得いかない! 『新井だから』って意味じゃないわよ、『なんでこのアタシが選ばれなかったのか』ってコト!」
須藤「よさないか、後白河」
後白河「るっさいわねー! アンタだって知りたいでしょーが、自分が選ばれなかった理由!」
初代店長「あぁ? 理由なァ…」
新井「れ、レイカさんの言うとおりです…。僕なんて、レイカさんみたいな強さもなければ、須藤くんみたいな冷静さもない。まさかふたりを差し置いて、落ちこぼれの僕が、て、店長だなんて…」
初代店長「まーな。おめぇ体力ねぇし、調理のほうはからっきしだもんなァ!(爆笑)」
新井「うぅ…(泣)。じゃあどうして…」
初代店長「おめぇら、店でも家でも、『二代目』に求められるもんって何だと思う?」
須藤・後白河・新井「……?」
初代店長「一代目の築き上げたもんをより強固にし、三代目以降に着実に繋げていく、いわば『地盤作り』の能力ってヤツさ。知ってるか、江戸幕府の二代将軍、徳川秀忠? 地味だがいい仕事してやがるぜ、あの将軍様はよ」
後白河「で、そのオッサンとウチの店と、何の関係があるってのよー」
初代店長「2号店を出そうなんてなぁ、俺にとっても大バクチだ。そんな中で、今みてーな感情に任せた後白河の言動は足元をすくわれ兼ねねぇし、須藤の度を越した慎重さはとっさの柔軟な判断の妨げにもなり得る」
後白河「そ、それはー! …(ブツブツ…)」
須藤「…おっしゃるとおりです」
初代店長「まァ、ぶっちゃけ消去法なんだけどな!」
新井「ふんぞり返らないでください(泣)! そ、それにしたって僕なんか…」
初代店長「つーか新井、本気で覚えてねぇのかよ? おめぇ、飲み会のたんびに、泣きながら俺にくだ巻いてんじゃねぇか…」
新井『ウィ~、ヒック! てんちょぉおー! 僕ぁねぇ、ずぇぇ――っったいに『まつかぜ』を、北関東一のラーメン屋に伸し上がらせてみせますよぉ! そのときには、店長には社長の椅子にドッカリ座っててもらって、何十何百もの店舗を、僕がパパァ~ッとマネジメントしてみせるんれす! 僕ぁ調理の方はダメダメれすけどぉ…ヒック! 頭脳と愛嬌と人付き合いの良さらけは、ここにいる誰にも負けないんれすからぁ! …つーか、おい! 聞いてんすかぁーっ店長ぉ! …ウプッ、急に吐き気が……(焦)。○×△□~~っっ!!(泣)』
後白河「あー、あれはたしかにひどいわー(笑)」
須藤「ふっ、後白河に言われるようではお仕舞いだな…」
後白河「わかったわよ! その代わり、この先3号店を出すことになったときの店長は、絶対にア・タ・シだから。そしたらこのボロ食堂は、須藤、アンタにくれてやるわよv」
須藤「ボロとは何だ! だいたいお前はいつも一言……(喧々諤々)」
初代店長「…なァ、新井」
新井「…はい?」
初代店長「さっさと俺を、社長の椅子にドッカリと座らせてくれよなァ!」

****** 須藤と新井の記憶 終了 ******

新井「結局お店のチェーン展開はなんとか軌道に乗って、本社ビル設立と同時に僕も望みだった本部勤務に移ることができたけど…。へへっ。現場の空気って、やっぱりたまに恋しくなるもんだよね。未だに厨房作業は苦手だけどさ(苦笑)」
店長「適材適所だ。社長もお前のマネージャーとしての資質を見抜いていたからこそ、真っ先に店長を経験させ、本部へと引き上げたんだろうからな」
新井「須藤くんも、いずれはお呼びがかかると思うけどね。レイカさんは…うーん。現場がいちばん性に合うって言ってたし、辞令が出ても断るかもね。…って…、あれっ? あそこ歩いてるの、寺山くんと桐原さんじゃない? 須藤くんとこの。もうひとりも見たことあるような…」
菜々花「あっ、店長に新井さん!?」
マサキ「お疲れさまッス!」
いっちゃん「どもー」
店長「珍しいな、3人揃って休みか?」
菜々花「休みなのはいっちゃんだけで、私とマサキは徹夜の遅番明けですぅ~…へへ…(フラフラ)。映画館のモーニングショーに行くんですけど、明るくなるまで時間あったから、ドライブイン横川で仮眠取って、『峠の釜めし』食べてましたぁ~」
マサキ「おい菜々花、間違っても上映中に寝るなよ? 『マトリックス リローデッド』くらい観とかねーと、さすがに話題に乗り遅れるからな…(ヨロヨロ)」(注:2003年6月7日公開)
菜々花「せめてエージェントが押し寄せてくるシーンだけは起きてるよーに頑張るよ…(コックリコックリ)」
いっちゃん「ちなみに車はあたしが出してるんで、心配いらないっすよー」
店長「すまないな市川、よろしく頼む」
新井「もしかしてきみが市川さん!? あの『ホール作業マニュアル草案』のレポート書いてくれた!?(注:#03参照)」
いっちゃん「あー、えっと、そうっすけどー…」
新井「『まつかぜ』西毛エリアマネージャーの、新井です」
いっちゃん「ハイッ!?(まじで!? この小動物っぽい人、てっきりウチらと同年代くらいかと…焦)……(キュピーンッ☆)大変失礼致しました! わたくし、安中店のホールで働かせていただいております市川裕美と申します。いつもお世話になっております(ガバッ←会釈)」
マサキ(うぉっ、就活モード入りやがった! つーかイッチーのこんな爽やかな笑顔見たことねぇっ…(ガクブル)マジ怖ぇ…泣)
新井「きみのレポートとホームページの新デザイン案、素晴らしかったよ。僕もそろそろその時期だと思ってたんだ、ホール作業マニュアルの全店舗一律化と、正式な企画開発部発足の必要性について……」
マサキ「(ぽかーん)あ、あれ? 新井さんってこーいう熱い感じの人だったか?」
菜々花「う、うん…なんかいつもはおっとりした癒し系ってイメージなのに…」
新井「『まつかぜ』を北関東一のラーメンレストランにするために…市川さん、きみの力を貸してほしいんだ!」
いっちゃん「…!! は…、はいっす!」
店長(ふっ…。今後も『まつかぜ』は安泰だな…)

〈END〉

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